
その170円行ける最長の駅が森下町である。池波正太郎の鬼平、すなわり長谷川平蔵は本所で若きを過ごし、近くの竪川は永井荷風の小説に出てきてお地名だけはお馴染みの感がある。森下町駅を出ると清澄通り、とりあえず両国を目差して歩く。歩く右手にパン屋を見つける。ここのカレーパンは何度か買ったことがあるな、と思って店に入ってカレーパンを5つ買う。1個145円也。そのまま清澄通りを歩いていると正面に橋が見えてきて、左に漫画「のらくろ」が笑っている。

「あっ!」、またやってしまったようだ。北を目差して南下していたのだ。これだから方向音痴は困る。それでも「のらくろ」の高橋商店街は面白そう。古い帽子屋、お総菜屋、赤いラーメンの暖簾。見て楽しいが、なにもうまそうなものが見つからない。ちなみに高橋商店街近くに田川水泡が住んでいたということにちなんで「のらくろ」が出迎えてくれる。
気を取り直して清澄通りを北に進むと有名な「魚三」。そーっと覗いてみると5時を過ぎたばかりなのに満員。うまそうな匂いをかぐととたんに腹の虫が騒ぎ出した。考えてみると、お昼にはほとんどなにも食べていない。もう一度「魚三」をのぞくが、やはり席があいているようには見えない。新大橋通の交差点に来ると向こうに「山利喜」が見える。ところが、ここも満席のように見える。
その隣、馬肉の「みのや」の手前に「喫茶・洋食 鍵」というこぎれいな店を見つけてハンバーグライスを食べる。この店、取り立ててうまいとは言えないが、清潔で雰囲気のいい店だ。
「鍵」を出ると夕暮れが迫り、街に灯がともりだした。裏通りに入り、八重桜満開の通りに出る。暮れなずなかにうす桃色の八重桜がぼんぼんと垂れ下がる。なんともきれいだ。しばし散策。
古い建物の奥に畳敷き、そこで金網を編む人が見える。そして向こうに明るい光が見えてスーパーがある。小さいが繁盛して夕食の材料を買い求める客で混雑している。その「フジマート森下」へ入ってみる。このスーパーはなかなか面白い。並ぶ食料品は平凡なものばかりだけど、魚売り場に養殖もののシマアジが丸のまま置いてある。お総菜売り場はすぐ奥で揚げ物を作っていて、客の注文を聞いてから揚げるのだろう。ここで見つけたのが「四ツ目納豆」。真っ赤なラベル、書体も古めかしくいい感じ。しかも1個60円は安い。これを2個買って通りに出ると既に日はとっぷりと暮れているのだ。
そのまま清澄通りにもどる道すがら見つけたのが、木造の八幡造りを思わせる銭湯「大正湯」。きっと大正期に開業したんだろう。

ネジの問屋を過ぎて清澄通りを北に歩く。

竪川を渡ると左手にひっそり明かりをともした茶屋、そして相撲番付を貼っているミシン店。

京葉道路を左折。向こうに相撲小物を売る「高はし」、そして小さな明るい通りを見つけて、その先に電車の通るのが見える。両国駅にたどり着いてスイカでホームにあがって無駄歩きの旅は終了する。











































